売買算と比の基本
売買に関する問題は,「ひもを分ける」とか「ある仕事をする」など算数でよくありがちな“設定がよく分からない”問題と違い,ある程度実生活に沿っているため,比較的イメージしやすいのですが,比に関する理解が必須となるため,つまづきやすい分野でもあります.
具体的な問題に取り組む前に,まず用語の確認をしておきましょう.
例えば,Aくんが築地の市場でマグロを8000円で買ってきて,それを銀座にて10000円で売ることでお金もうけをしようと考えたとしましょう.
このとき,Aくんが築地の市場でマグロを手に入れた時に払った8000円・・・これが「原価」です.「仕入値」とも言います.
次に銀座でマグロを売るときの値段である10000円・・・これが「定価」です.
もしAくんのマグロが10000円で売れると,10000-8000=2000円だけもうかることになります.この2000円が「利益」です.
しかし,必ずしも10000円で売れるとは限りません.10000円では誰も買ってくれそうにないので,Aくんはマグロを1000円値下げして9000円で売ることにしたとしましょう.この9000円のことを「(実際の)売値」と言います.
9000円の売値でマグロを売ったときの「利益」は9000-8000=1000円となります.
もしAくんが3000円値下げしたらどうなるでしょう??この場合マグロの売値は10000-3000=7000円となります.Aくんはマグロを8000円で仕入れたはずなのに7000円で売ったのでは1000円損することになってしまいます.
利益はどこを基準にするかで求め方が違ってくるので注意しましょう.定価で売ったときの利益なら「利益=定価-原価」ですが,実際の売値で売ったときの利益は「利益=売値-原価」となります.もし,売値が原価より安いと引き算ができません.この場合は利益ではなく損が発生していることになります.
次のような問題を考えてみましょう.
まずは計算で求めてみましょう.
定価は1000×(1+0.2)=1200円です.
売値は1200×(1-0.1)=1080円です.
よって,利益は1080-1000=80円 となります.
これを比で表すことを考えてみましょう.
まず原価である1000円を①としてみます.
原価を①とすると,定価はとなります.
定価をとすると,売値は
となります.
○と□が混じっているので,すべて○で表すことにします.
□は0.9倍になっているので○も0.9倍になります.
よって売値はとなります.
原価は①なので,利益はです.
①=1000円ですから,利益はと求めることができるわけです.
ここでよくある間違いについて触れておきます.
原価を①とすると,定価はとなります.ここから1割引きにしたので売値は
となる???
売買算に限らず比の問題では「どこを1としているか」が非常に重要です.この問題では「2割の利益をみこんで~」の部分は「原価を1」としています.「定価の1割引きで~」の部分では「定価を1」としています.それぞれ元にしている量が異なっているため,単純に足し引きすることはできないのです.線分図に表してみると次のようになります.
売買算の難しいのはこのように○や□が入り乱れて,その結果どう計算してよいか分からなくなる・・・という点です.
どの量がどこにあたるのか,何のために○や□と置いているのか,などに注意しましょう.