約数と倍数 その3
「約数と倍数 その1」ではベン図を使って倍数が何個あるかを求める問題に,「約数と倍数 その2」では分数に関する問題に取り組みました.今回はまた一味違ったタイプの問題を見てみましょう.
ではさっそく問題です.
案外こういう問題は大人にも難しいものです.小学生では習わない「方程式」などを駆使したところでなかなか解けるものではありません.逆に,個人的にはこういう問題もあるから中学受験算数は面白い,とも思います.
さて,解き方ですが,この問題は「倍数の数」を数えることで求めます.
問題文の「何個0が並んでいますか」という部分は言い換えてみると「何回10で割り切れますか」ということです(←ここ重要).
そうか,じゃあ1からから100の中にある10の倍数の数を数えればよいのか!・・・と考えたいところですがこの問題はそんなに甘くありません.
1から100には10の倍数は10個あります(10,20,30・・・100).なのでこの数は確実に10回は10で割り切ることができます.しかし,10の倍数はこの10個だけではありません.たとえば2と5をかけると10になります.なのでここでも1回10で割り切れます.4と15をかけると60になります.なのでここでも1回10で割り切れます・・・と,このように数を組み合わせることでも10の倍数が作り出せてしまうのです.それらをひとつひとつ数え上げるのは非常に手間がかかってしまいます.ではどのように考えればよいのでしょうか?まず『10』という数そのものに注目してみましょう.
10という数字を素数の積で表すと10=2×5となります(これを素因数分解と言います).つまり2の倍数と5の倍数の組み合わせが10の倍数となるのです.
つまりこの問題は「1から100の中には2の倍数と5の倍数の組み合わせは何組ありますか?」と聞いているのと同じことになります.
1から100までに2の倍数は100÷2=50個あります.
5の倍数は100÷5=20個あります.
ですので,2の倍数と5の倍数が一人ずつ手をつないでゆくと,カップルが20組できることになります.(悲しいですが2の倍数は30人余ってしまう)
なのでこの問題の答えは20個!・・・と言いたいところですが,それではまだ少し詰めが甘いです.
たしかに2の倍数と5の倍数のカップルは20組なのですが,5の倍数の中には「2人の2の倍数と手をつなぐことができる」強者がいるのです.
その強者は25の倍数です.25=5×5なので25の倍数は5で2回割ることができるのです.25の倍数は1から100の中に100÷25=4個あります.先ほど2の倍数と5の倍数を組み合わせていったとき,2の倍数は30個余っていました.この中の4名は特別に25の倍数と手をつなげるというわけです.
さて,では3人の2の倍数と手をつなげる数は存在するでしょうか?少し計算してみましょう.
3人の2の倍数と手をつなげる数というのは5で3回割れる数です.しかしそれは5×5×5=125となり100よりも大きくなってしまいます.ですのでこの問題の場合はそのような数は存在しません.
以上のことから結局,20+4=24回10で割り切ることができることになり,答えとしては0が24個並ぶということになるのです.
話が長くなってしまいましたが,この辺で考え方をまとめてみましょう.解答の流れは次の通りです.
- 「0が何個並ぶか」→「10で何回割れるか」
- 「10の倍数」は「2の倍数」と「5の倍数」の組み合わせである
- 1から100までに含まれる5の倍数の数は100÷5=20個
- その中には5で2回割れる数(25の倍数)が100÷25=4個存在する
- 5で3回割れる数(125の倍数)は存在しない
- 結局,20+4=24回10で割り切れることになる
- なので答えは24個
どうでしょうか.考え方の流れはつかめたでしょうか?この問題には2箇所ほど落とし穴が仕掛けられていました.この種の問題は中学入試では比較的出題率が高い標準的な問題ですので解法をよく確認し,落とし穴にはまってしまわないように注意しましょう.