『パップス・ギュルダンの定理』を使って体積を簡単に求める
立体の体積を求める・・・なかなか面倒くさい計算ですね.特に複雑な形状となると問題を見ただけでやる気をなくしそうです.
立体の体積を簡単に求められる「魔法の公式」みたいなものがあればいいのに・・・そう思ったことのある人も多いはず.
実は回転体に限定すれば,体積を簡単に求められる公式(定理)があります.
その定理とは『パップス・ギュルダンの定理』 という名の定理です.
今回はこの「パップス・ギュルダンの定理」を使って回転体の体積を求めてみましょう.
パップス・ギュルダンの定理とは
パップス・ギュルダンの定理とは次のような定理です.
回転体の体積 = 断面積 × 断面の重心の移動距離
字で見てもよく分からないので具合的な問題を見ながら使い方を確認してみましょう.
具体的な体積の計算
![]() | 左図のような長方形を直線Lを軸にして回転させたときの体積を求めてみましょう. この場合,回転体は半径2cm,高さ4cmの円柱になるので,その体積Vは V=底面積×高さ=2×2×π×4=16π cm3 となります. |
これをパップス・ギュルダンの定理を使って解いてみます.
「断面積」は縦4cm,横2cmの長方形なので
2×4=8 cm2 です.
![]() | 「断面の重心」は左図の青い点で示しているように,この長方形の中心です. そして,重心はLが回転すると半径1cmの円を描くので,
よって回転体の体積Vは
|
では次にもう少し複雑な問題を考えてみましょう.
![]() 図1 ![]() 図2 ![]() 図3 | 今度は左に示す図1のような平行四辺形を直線Lを軸に回転させる場合を考えてみます. この場合,通常の計算では,求める体積は図2に青色で示す補助線を引いて,大きな円錐からA部とB部の小さな円錐を引くという計算をします. 大きな円錐の体積V1は
これをパップス・ギュルダンの定理を用いて解いてみます. 「断面積」は平行四辺形の面積となるので
「断面の重心」は図3の青い点で示す平行四辺形の中心となります.重心はLが回転すると半径2cmの円を描くので,
「断面の重心の移動距離」は,
よって回転体の体積Vは,
・・・ずいぶん簡単に求まりましたね. |
このようにパップス・ギュルダンの定理を使うと,回転体の体積を簡単に求められることがあります.
「ことがある」というのは,上の例で見たような断面積や重心が簡単に求められる問題は稀で,実際にはなかなか断面積や重心が求められない(特に重心)ので,普通に計算した方がよっぽど早い,ということの方が圧倒的に多いからです.