速さと比(図形と点の移動)
このページでは,図形の問題と関連して出題される旅人算を紹介します.具体的には,図形上を動き回る点があって,点の動きと共に面積も変化する,という類の問題です.
この場合,進行グラフは,「横軸に時間・縦軸に距離」,ではなく,「横軸に時間・縦軸に面積」となることに注意です.
まずはよくある基本問題です.
台形の面積は『(上底+下底)×高さ÷2』ですから,辺ADと辺BCの長さがわかれば答えが求められます.
グラフをよく見ると,24秒後までは一定の割合で増加していますが,24秒を境に減少に転じています.
このタイプの問題ではこのような『グラフが変化した点』に注目するのが非常に重要です.
点Pは,B→C→Dの順に動いているのですから,グラフに変化が現れるのは点PがCに到着したときです.よって点Pは24秒後にCに到着したことがわかります.同様に40秒後にはDに到着しています.
点Pは秒速0.5cmで動いているので,辺BCの長さは,
0.5×24=12cm であることがわかります.
次に点PがDに到着したとき(40秒後)に注目してみましょう.
このとき,グラフより面積は12cm2 になっています.
三角形ABDの面積は,
AD×6÷2=12cm2 なので,辺ADの長さはこれを逆算して,
12×2÷6=4cm となります.
これで台形の上底と下底がわかりましたので,その面積は,
(4+12)×6÷2=48cm2 と求まります.
以上のように,「グラフの変化と点の位置」の関係を把握できれば,そう難しい問題ではないはずです.
ちなみにこの問題では次の式で辺CDの長さも求められます.
0.5×(40-24)=8cm
ついついこの長さも計算してしまいがちですが,この問題では辺CDの長さを求めても,残念ながら何の役にも立ちません・・・.
では次の問題です.問題1と同じく点は移動するけれど,グラフは与えられていないタイプの問題です.
ここまで来ると,旅人算というよりはむしろ純粋に図形の問題のような気もしますね・・・.
それはさておき,この問題の場合,最初にある程度問題を整理することができます.
まず,台形ABCDの面積を求めておきましょう.
(8+16)×6÷2=72cm2
問題は斜線部が台形の面積のちょうど半分になるときなので,その面積は,
72÷2=36cm2 です.
斜線部の面積は中途半端な四角形ですが,これは次のように分割するとわかりやすくなります.
図の三角形ABDの面積は,
8×6÷2=24cm2 です.
よって,三角形BPDの面積は,
36-24=12cm2 となります.
三角形DBCの面積は,16×6÷2=48cm2 なので,三角形BPCの面積は,
48-12=36cm2 となります.
ここまで整理できれば,ピンとくるものがあるはずです..
そうです,三角形BPDと三角形BPCの面積の比からDPとPCの長さの比がわかるのです.
▼確認
高さの等しい三角形の底辺の比は面積の比と同じです.
これを三角形BPDと三角形BPCにあてはめると,面積の比は,
12:36=1:3 と計算できるので,DPとPCの長さの比も1:3になります.
よって,DPの長さは10cmを比例配分することで求められます.
点Pは毎秒1cmで動くので,求める答えは,
2.5÷1=2.5秒 となるのです.
もうほとんど図形の問題でしたが,この問題が図形のカテゴリーなのか旅人算のカテゴリーなのかは,受験生にはまったく関係ありません.そんなことよりも,「どんな方法を使えば解答できるか」の方が重要です.頭の中の引き出しは多ければ多いほど有利です.「旅人算」とか「図形と比」などは数ある引き出しのひとつに過ぎません.問題に応じて必要なときに必要な引き出しを素早く開けられるよう,色々なタイプの問題に触れ,その解法を良く確認しておきましょう.
ちなみに,この問題はグラフを用いて解くこともできます.
点PがDを出発したときの斜線部の面積は,三角形ABDの面積となるので,24cm2です.
点PがCに到着したときの斜線部の面積は,台形ABCDの面積となるので,72cm2です.
点PがCに到着するまでにかかる時間は,10÷1=10秒です.
以上をふまえて,時間と斜線部の面積の関係をグラフに表わすと次の通りです.
問題はこのグラフ上で36cm2になるときの時間(図の「?」)を求めればよいことになります.
グラフより,10秒間で面積は72-24=48cm2増加しています.
ということは1秒間では,48÷10=4.8cm2ずつ増加することになります.
36cm2になるまでは,36-24=12cm2増えているので,これにかかった時間は,
12÷4.8=2.5秒 と求められます.
図形の比で解くか,グラフで解くかはどちらでも構いません.ここでは,グラフより図形の比を用いるほうが発想として自然だろうと思い,図形の比を中心に解説しました.