速さと比(旅人算と進行グラフ)
速さと比(旅人算の基本)では進行グラフの基本的な使い方を確認しましたが,このページでは進行グラフそのものを問題としている代表的なパターンを紹介します.
まずは1問目です.
グラフを見てもA―B間の距離はわかりません.よってP,Qの速さを求めることもできません.
ではどうやって求めるか・・・? グラフを見て既になんとなく気がついているかもしれませんが,「比」を使うのです.
グラフよりA―B間を進むのにかかるPとQの『時間』がわかります.
A―B間を進むのにPは3時間,Qは5時間かかっているので,同じ距離を進む時にかかる時間の比は,P:Q=3:5 となります.
PとQが出会った地点を『C』とすると,PとQがA―C間を進むのにかかった時間の比も3:5になります.
よって,あとは5時間を3:5に比例配分すれば解答にたどり着けます.
問題は何時何分何秒かを聞いているので,時間を分に直します.
さらに,分を秒に直します.
以上の計算より,出発してから出会うまでにかかった時間は,1時間52分30秒となります.
出発時刻は3時なので答えは,3時+1時間52分30秒=4時52分30秒 ということになります.
進行グラフから比を用いるという点もさることながら,この問題のように時間を分や秒に直す計算もスムーズにできるようにしておきたいところです.
なお,この問題の進行グラフには明らかに相似な三角形がありますが,上の解答では「図形の相似比」は使っていません.あくまでも「時間の比」を用いて解答しています.
ちなみに図形の相似比を使うと次のように考えることができます.
三角形DBGと三角形DFAは相似.その相似比は3:5である.
よって辺DH:辺DE=3:5である.
三角形FDEと三角形FBAは相似.辺DE:辺BAは5:(3+5)=5:8なので,相似比は5:8である.
よって辺FE:辺FA=5:8である.
以上より辺AE:辺EF=(8-5):5=3:5となる.
※以降は比例配分で計算する
図形の相似を利用したこの方法も間違いではありませんし,解答としても適切です.しかし,図形の相似比を用いた解法は,「速さ」や「時間」といった概念からはまったくかけ離れた便宜的な解法であり,その解答の過程は実質的な意味を持ちません(この辺の事情は食塩水における『天びん』の利用の可否に似ています).よって本サイトではできるだけ「速さ」や「時間」といった「その問題に由来する概念」を用いた解説をするようにしています(ただし,図形的な解答を否定するものではありません).
では次の問題です.
この問題は今までの問題に比べて少し難易度が高いです.グラフからは2人が1回目に出会ったのは出発してから12分後,2回目に出会ったのはBから1200mの地点,ということしか読み取れません.あとわかっているのは太郎の速さが「分速80m」であるということくらいです.これだけの情報だけではどうやっても計算が行き詰まってしまいます.
しかし,この問題は進行グラフをよく見ると,もうひとつ数値がわかる点があります.
それは,「2人が2回目に出会うまでにかかった時間」です.
ん?そんなのどうやってわかるんだ?と思われるかもしれませんが,次の手順で進行グラフを確認してみましょう.
2人が1回目に出会った地点を「ア」とします.
出発してから12分で2人はアに到着しています.このとき,下の進行グラフの右側に示しているように,この12分で進んだ2人の距離の合計はA―B間の距離と等しくなります.
次に,2人が2回目に出会った地点を「イ」とします.
2人がアで出会ってから,イで再び出会うまでに進んだ距離の合計は,下の進行グラフの右側に示しているように,A―B間の距離のちょうど2倍になります.
(※ここがこの問題の一番重要なポイントです)
2人はA―B間の距離を12分で出会っているので,A―B間の2倍の距離を出会うのにかかる時間は12×2=24分であることがわかります.
よって2人が出発してから2回目に出会うまでにかかった時間(進行グラフ上の「?」)は,12+24=36分 であることがわかるのです.
ここまでわかれば後はなんとかなりそうです.
太郎の速さは分速80mであることがわかっているので,この36分で進んだ距離は,
80×36=2880m と求まります.
太郎はBについてから1200m引き返しているので,A―B間の距離は,
2880-1200=1680m であることがわかります.
2人が1回目に出会ったのは出発してから12分でしたから,
1680÷12=140m/分 これが2人の速さの『和』になります(出会い算).
よって花子の速さは,
140-80=60m/分 → 答:分速60m となります.
この問題のように「ある区間を2人が何度も往復する」問題は比較的よく出題されます.こういう問題では「1回目に出会ってから2回目に出会うまでには,2人合わせるとその区間の2倍の距離を移動している」ということに気付くことが非常に重要となってきます.